エネルギーフォーラム雑誌7月号(2023年7月1日発売)リレーコラム記事に登場

エネルギーフォーラム雑誌7月号のリレーコラムページに登場。企業への想い・業界における使命などを書かせて頂いております。

エネルギーフォーラム わが国唯一の総合エネルギー専門誌 (energy-forum.co.jp)

 

流動性欠く未熟な卸市場に風穴、価格リスク引き受けマネージ

安定した価格で取引できる市場には、十分な流動性が担保されている。では、日本の電力取引市場はその流動性が高いと言えるだろうか。長くエネルギー・コモディティ分野でトレーディング業務に身を置いてきたせいか、私はこの業界が抱える流動性に関する課題の大きさと根深さを人一倍強く感じてきた。同時に、おぼろげながら解決の糸口も見えていた。電力卸に特化したビジネスモデルは、こうした思いに端を発している。

日本の電力市場は、需要家向けの小売が先行して自由化されたが、新電力が電気を調達する肝心の卸市場は構造的に未熟な状態が続いていた。多くの新電力がリスクを固定化できず、変動の激しい日本卸電力取引所に調達の多くを依存せざるを得なかったからだ。

この大きな要因の1つが、電力の出し手である電力会社や発電所所有会社が卸市場に十分な電気を提供していない点にある。仲介するブローカーは数社存在したものの、どのような状況下でも価格を出して引き受けるようなマーケットメーカーは不在であり、買い手の新電力が理想とするタイミングや価格での取引を臨める構造になっていなかった。

電力卸のマーケットメーカーに

当社が志向する電力卸のマーケットメーカーとは、どの電力会社の資本にも属さない独立系・中立というポジションから、電力の供給側と需要側の双方が抱える価格変動リスクを直接引き受け、金融の知見を活かしてマネージする存在。売りでも買いでも取引したい企業が必ず取引を執行できる価格を提示し、当社自身が取引相手となる。この安心感の醸成こそが流動性を向上させ、日本の電力マーケット全体の安定化につながっていくと考えている。

会社設立から間もなく2年。市場での取引開始から1年3カ月が経とうとしている今、こうした思いは有難いことに当初想定を上回る早さで届き始めている。当社の相対取引者数は60社超となり、取引電力量は98億kWh(金額ベースで2300億円)を超える規模まで急拡大した。当社を単なるいちプレーヤーではなく、日本の電力業界が抱える課題解決に一緒に取り組めるパートナーとして認識いただいていることが何より大きい。

国際情勢は今なお予断を許さない状況が続いており、電力価格のボラティリティも依然として高い。だからこそ、私たちが果たせる役割は少なくないはず。電力の売り手も買い手もWIN-WINになる「電力の絆をつむぐ」ソリューションをより一層磨き上げていきたい。